自分では結構頑張ってるつもりやねんけど、なかなかラップタイムが縮まへん…。
そんな時は、他の人のGPSデータロガーと比較して、改善点を見つけよう!
本記事では、初心者と上級者の実際のGPSデータロガーのログを比較して、ラップタイム短縮のための改善点を探ってみます。
今回はデータからタイヤの使い方に大きな違いが見られるケースだったので、そこに着目して解説していきます。
今回のネタ
今回解析に使うネタは、2018年に岡山国際サーキットで開催された軽自動車の耐久レースの走行ログです。
この年のK4-GPに向けて、普段サーキットを走る機会が少ないチームメンバーの練習を兼ねて参加しました。
車両はこちら。スズキ アルト(HA36V)です。
足回りは特注のサスペンション&ダンパーが付いていますが、それ以外はほぼノーマルです。
タイヤはこのときはDUNLOP DIREZZA ZⅢを装着。
軽量で動きは機敏な反面、NAエンジンで非力なので、速く走らせるためには無駄のないドライビングが要求されます。
GPSデータロガーから見える改善点 2つ
それではGPSデータロガーのログを解析していきます。
当日最速だった私のラップと、その次に速かったチームメンバーのラップを比較します。
- 赤 私 ラップタイム 2分14秒074
- 青 チームメンバー ラップライム 2分19秒077
ラップタイムの差は実に5秒。
軽自動車なんて、誰が乗っても似たようなタイムになりそうなもんですが、奥が深いんですよね~。
この5秒の差について、細かいところまで分析し出すとたくさんありすぎるので、今回は最も注目すべき点に絞って解説します。
コーナーのボトムスピードを落としすぎている
速度のグラフを見て一発でわかるのが、コーナーのボトム速度の違いです。
赤(私)に比べて、青(チームメンバー)の方がコーナーで車速が落ちているのが分かると思います。
特に、中高速コーナーでの車速の落ちが大きいですね。
具体的に何km/hくらい違うのか見ていきます。
まずは1,2コーナー。
どちらも9km/hほど差があります。
赤の方が9km/h速いコーナリング速度で曲がれているわけですから、青の方が単純に9km/hも落としすぎなんですね。(もう少し言うと、2コーナーは36アルトであればアクセル全開で曲がれてしまうので、減速する必要すらなかったりします。)
もう一か所見てましょう。
次のブレーキングポイント、アトウッドコーナーです。
こちらは10km/hも差が出ています。
一応、走行ラインを見てみると、多少コースの幅の使い方に差があるものの、大きくラインを外しているということはありません。
じゃあ、このボトムスピードの差、つまり、必要以上に車速を落としてしまっているのは何に起因するのか?
それは、次の2点目が関係してきます。
タイヤのグリップが使い切れていない
2点目、こちらが今回最も注目していただきたいポイントですが、タイヤの使い方です。
そんなのGPSロガーでわかるの?って話ですが、これは加速度グラフを見ることでわかるんですね。
今回、一番差異が分かりやすかったのがバックストレート後のヘアピンだったので、そこの加速度グラフを見てみます。
グラフの見方ですが、自車を中心に、前後左右どの方向に加速度(G)がかかっているかをプロットしています。加速度というより、遠心力といったほうが分かりやすいかもしれません。
実線は、コーナー進入時のブレーキングから、コーナリングでステアリングを一番切っているところあたりまでの加速度の変化を繋いで軌跡表示しています。
ブレーキングにより前方向に加速度がかかった後、右コーナー旋回により左方向に加速度がかかる動きになります。
ここで注目すべきなのが加速度の軌跡です。
中心からの距離がクルマが受けている加速度の大きさになりますが、これはすなわち、タイヤがどれだけ踏ん張っているか=タイヤのグリップを使っているか、になります。
赤(私)の方は、ブレーキングにより前方向に加速度が立ち上がった後、その加速度の大きさを維持したまま左方向の加速度に移っています。
一方、青(チームメンバー)の方ですが、ブレーキングにより前方向に加速度が立ち上がった後、前方向の加速度が小さくなりながら、赤の線よりもだいぶ内側を通って左方向の加速度に移っています。
これは何が起きているかというと、ブレーキングのために使っていたタイヤのグリップをせっかく解放したのに、そのグリップをすぐにコーナリングのために使えていないんですね。つまり、タイヤのグリップを持て余している状態になっています。
この「タイヤのグリップを持て余している状態」は、間接的に1つ目のコーナーのボトムスピードの落とし過ぎに繋がります。というのも、結果的に、青の方はタイヤのグリップが使い切れていない=グリップの低いタイヤで走っているのと同じ状態なので、必然的にボトムスピートを落とさないとコーナリングできなくなってしまうわけです。
ブレーキングからコーナリングにかけて、タイヤのグリップ力の分配を100%になるようにリニアにつないでいく…ドラテク本などでよく言われることですが、自分がどれだけ実践できているかが、GPSロガーを見ることで知ることができます。逆に、ログ見ない限り、気付けないと思いますので、やはりGPSロガーはドラテク向上には必須アイテムと言えます。
おまけ ブレーキングの詰め方
これは本記事でお伝えしたい内容からは少し脱線するのですが、今回のログでブレーキングの詰め方でよいお手本の挙動があったので紹介しておきます。
バックストレート後のヘアピンに向かうブレーキングですが、青の方の速度グラフに注目してください。
若干ですが、コーナー手前でグラフの傾きが緩くなっていると思います。
これは何が起きているかというと、コーナー手前でブレーキを緩めているんですね。
つまり、思ったより早く狙った速度まで減速できそうだったので、帳尻合わせをしている状態です。
これ、ブレーキングとしては失敗ではあるのですが、いい失敗の仕方で、次の周でもう少しブレーキング開始を遅らせて、最終的に最後の帳尻合わせが発生しない所を探ることができれば、完ぺきなブレーキングに持っていけるわけです。
一方、たまにあるのが、ブレーキングの開始時にふわっとブレーキを開始するパターン。
これは最終的に正しいブレーキングポイントを探るのが非常に難しいですし、最悪、コーナー手前で調整する余裕がなくなってコースアウトする危険性もあるので、ダメな失敗の仕方です。
まとめ
実際の走行ログを解析して、GPSデータロガーから見えるタイヤの使い方について解説しました。
GPSデータロガーの加速度グラフを見れば、タイヤがうまく使えているか見える!
がむしゃらに走るだけでは、何が良くて、何が悪かったのか、見えてきません。
GPSロガーを活用して、効率よくドラテクを向上していきましょう。