タイムアタックでええ感じに走れててんけど、肝心なところでシフトミスして、タイムロスしてもうたわ~(涙)
シフトミス、大失敗と思いますよね。
でも、実際、どのくらいタイムロスしてるか、ちゃんと見たことあります?
本記事では、サーキットでのタイムアタックにおいて、シフトチェンジの時間やシフトミスが、どのくらいのタイムロスを生んでいるかについて考察してみたいと思います。
よくある勘違い
問題です。
シフトアップが1周で10回あるサーキットで、めっちゃがんばってシフトアップの時間を1回あたり0.1秒短縮しました。
さて、ラップタイムは0.1秒×10回=1秒短縮できたでしょうか?
正解は、単純に1秒縮むとは限らない、です。
なぜなら、シフトアップの時間、クルマは停止しているわけではなく、(ほぼシフトチェンジ直前の速度で)進んでいるからです。なので、丸々シフト時間分タイムロスするわけではありません。
一方、シフトアップが遅れることによって、その分、加速が遅れるので、その後の加速区間の平均速度は落ちます。この分のタイムロスが発生します。
ということで、シフトチェンジの時間がラップタイムに及ぼす影響は、単純に出せるものではないんですね。
実際のデータで計測してみる
では、実際の走行で、シフトチェンジの時間でどのくらいタイムロスが発生するかを見てみましょう。
こんな時に役に立つのが、GPSロガーです。
GPSロガーについては、下記の記事で解説しています。
まずは私の車載動画をご覧ください。とある日のセントラルサーキットでの模擬レースの映像になります。
最終コーナーで痛恨のシフトミス(^^;
このシフトミスがどのくらいタイムロスになっているかを、GPSログデータで解析していきます。
GPSロガーは、私も愛用しているデジスパイスを用います。
まずは速度グラフを見てみます。
青がシフトミスしたラップです。
シフトミスした箇所で、加速していない区間がはっきり現れていますね。時間にして約0.7秒間です。
グラフの黒い線は、赤のラップと青のラップのタイム差を表しているのですが、シフトミスした後、右肩上がりになっています。これは、赤のラップ=シフトミスしていないラップに対して、どんどんタイム差が付いていることを表します。
なぜこうなるかというと、シフトミスした分、加速が遅れるので、その後のストレート区間の平均速度が落ちるためです。
つまり、シフトミスによるタイムロスというのは、シフトミスしている区間自体がロスになるわけではなく、その後の区間の速度差がじわじわとロスになっていくわけですね。
具体的にこのケースで何秒ロスしているかを見てみます。次のシフトアップまでをセクター指定します。
この区間のタイム差は約0.2秒でした。
結果として、シフトミスでシフトアップの時間が0.7秒余計にかかったものの、それによるタイムロスは0.2秒程度だった、ということになります。シフトミスの時間が丸々タイムロスにならないことがお分かりいただけたと思います。
シミュレーションしてみる
もう少し考察を深めて、もしシフトミスの時間が〇秒だったら、何秒タイムロスするか?というのをシミュレーションしてみたいと思います。
今回はざっくり計算なので、
- シフトミスの区間は速度一定 (現実は、いろんな抵抗で速度が落ちる)
- クルマの加速度は常に一定 (現実は、速度の二乗で空気抵抗が効いてくるので、高速になるほど加速度が落ちる)
- クルマの加速度はさきほどのログの区間の平均加速度とする(インテグラTypeR)
という条件でモデルを単純化します。
速度グラフにすると、下図のような感じになります。
この条件で、シフトミスの時間とタイムロスの関係をグラフにすると、下図のようになりました。
だいたい、シフト時間の3分の1くらいがタイムロスになることがわかります。
今回の計算はインテグラTypeRの加速度を前提としていますが、これより加速の遅い車の場合は、タイムロスはより小さくなります。
逆に、これより加速の速いクルマは、タイムロスがより大きくなります。
初心者はシフト操作をがんばらなくてよい?
私がシフトチェンジの時間がラップタイムに与える影響について考えてみようと思ったのは、ドラテクを磨くにあたって、シフト操作のうまさがどのくらい重要なのかを把握したかったからです。
冒頭の問題のケース、シフトアップが1周で10回あるサーキットでシフトアップの時間を0.1秒改善したとして、仮にすべてのシフトアップが先ほどのシミュレーションと同じ条件だとすれば、ラップタイムの改善は0.3秒程度になります。
これが大とみるか小とみるかは、人それぞれになってくると思います。
例えば、まだサーキットデビューしたばかりで、ラップライムを秒単位で縮めている段階の人であれば、ぶっちゃけ無視してよいロスになると思います。下手に慌てて操作してミッションやエンジンを壊すリスクを考えれば、シフト操作の速さはあまり意識せず、落ち着いて行ったほうがよいといえるでしょう。
0.5秒とか0.1秒単位でラップタイムを狙いに行くレベルになってきたら、シフト操作の時間を見直してみるのがいいと思います。
まとめ
- シフトチェンジの時間は丸々タイムロスにはつながらない
- 実際のタイムロスはGPSロガーで解析してみる
(とあるケースでは、シフトチェンジの3分の1くらいがタイムロスとなる結果だった) - ドライバーのレベルに応じて、シフト操作を見直す
途中ごちゃごちゃとした考察になってしまいましたが、素人だからこそ、勘に頼らずに、しっかりデータを基に自分自身の弱点を把握して、改善していきたいですね。